
こんな疑問に答えます。
こんにちは。カラダ・ラボ オレンジです。
先日のツイートです。
#第5中手骨骨幹部の斜骨折 まとめ
末梢片骨片転位→屈曲・内転・短縮徒手整復
末梢片→牽引・背屈・外転
中枢片→対抗牽引・内転固定肢位
IP関節→伸展
MP関節→20°屈曲
手関節→軽度背屈簡単にまとめるとこんな感じ😳
もう少し骨折面を密着できればよかったと反省です。 pic.twitter.com/vumGoGNPgM— なおや/気ままなセラピスト (@n8sunny) January 24, 2020
#第5中手骨骨幹部の斜骨折 まとめ
末梢骨片転位→屈曲・内転・短縮
徒手整復
末梢片→牽引・背屈・外転
中枢片→対抗牽引・内転
固定肢位
IP関節→伸展
MP関節→20°屈曲
手関節→軽度背屈
簡単にまとめるとこんな感じ
もう少し骨折面を密着できればよかったと反省です。
といった感じの症例を経験することができました。
中手骨の斜骨折は整復・整復位の保持が非常に難しく再転位しやすい骨折の一つですね。
今回の症例、結果として再転位してきてしまったので、この経験をしっかり活かすために、中手骨斜骨折の保存療法について復習していきたいと思います。
僕自身、整形外科に10年間勤務していて中手骨骨幹部斜骨折は数例経験しており安定した成績をなかなか残せない苦手な骨折でもあります。
この記事を読んでわかること
- 第5中手骨骨幹部斜骨折は徒手整復・整復位保持が難しい
- 第5中手骨斜骨折の整復のコツと整復位保持のための固定のヒント
ぜひこの記事を参考に考察していただき治療のヒントにしていただければ幸いです。
第5中手骨骨幹部斜骨折は徒手整復・整復位保持が難しい
毎度のことですが“第5中手骨骨幹部斜骨折は徒手整復・整復位保持が難しい”と感じます。
整復がうまくいかないこともあるし、整復がうまくいっても整復位が保持できないということがあります。みなさん、どうですかね、、、
僕の中では、保存療法が難しい骨折ベスト3に入っています。
今回の症例も、整復はある程度戻せてはいるものの完璧ではなく、整復位も保持できずといった苦い経験をしました。
第5中手骨骨幹部斜骨折=短縮との戦い
といったところでしょうか、、、
とりあえず、次はもっとよくできるように第5中手骨骨幹部骨折の勉強をしていきます。
第5中手骨骨幹部斜骨折とは
まずは、第5中手骨骨幹部斜骨折について復習していきます。
知っておきたい特徴は以下のとおり、
- 再転位しやすい
- 回旋転位・短縮転位を生じる(屈曲転位はめずらしい)
ここを一つずつ解説していきます。
再転位しやすい
中手骨骨幹部骨折にはOTA分類というものがあります。
この中でも、横骨折以外は再転位しいやすい特徴があります。
骨折部が不安定なため、、、
軸圧がかかると骨折部はすべり台のようになっているため、末梢骨片が中枢方向に滑っていくことにより、短縮方向に再転位をしやすいと考えられます。
ちなみに、横骨折は噛み込んでしまうので短縮転位は起こりにくいですが、代わりに屈曲転位に注意が必要です。
こういった骨折部の形状から中手骨骨幹部斜骨折は再転位しやすく回旋転位と短縮転位とくに“短縮転位”を残しやすい骨折と言えます。
回旋転位・短縮転位を生じる
手部の構造的に回旋転位を特に生じやすいです。
手部にはこんな特徴があり
- 第3,4中手骨→転位軽度
- 第2,5中手骨→転位強い
これは深横中手靭帯の影響が大きいく
- 第3,4中手骨→深横中手靭帯の支持は両側から
- 第2,5中手骨→深横中手靭帯の支持は一側のみ
となっているから。そして要注意なのは、
- 短縮転位→2〜3mmであれば機能面で大きな問題にはならない
- 回旋転位→軽度であってもオーバーラッピングフィンガーを形成=障害大
という事。
オーバーラッピング・フィンガーになってしまうとものがしっかり握れないという機能障害が起きてしまうので、徒手整復前と後にしっかりと確認しておく必要があります。
オーバーラッピング・フィンガーの確認方法
MP関節を直角になるまで屈曲し隣接する指が交差しないか確認する。
以上がない場合は、すべての指尖が舟状骨結節に向かう。
引用:柔道整復学【理論編】
注意すべきは“オーバーラッピング・フィンガー”です。
この2つの特徴を考慮しつつ保存療法に望む必要があります。
第5中手骨骨幹部斜骨折の整復のコツと整復位保持のための固定のヒント
それでは、整復・固定をうまくするにはどうしたら良いかについて考えていきたいと思います。
ポイントは“牽引”かな、といった感じです。
圧倒的に短縮転位が取り切れないとか、短縮方向に再転位してしまうという悩みが多いから。
実際にはこんな事を考えていて
- 整復→牽引する方向に工夫が必要
- 固定→持続的に牽引がかかるように工夫が必要
といった感じ。どういうことか解説していきます。
整復→牽引する方向に工夫が必要
中手骨長軸に牽引してもうまく引けないと考えています。
おそらく深横中手靭帯があるからで、
- 長軸に牽引→早い段階で深横中手靭帯が緊張→牽引の距離を稼げない
- やや橈側に牽引→深横中手靭帯が緊張しづらい→牽引の距離を稼げる
このように考えています。
こんな思考のもと、今回の症例に対して僕はこんな徒手整復をしていて、
末梢骨片転位→屈曲・内転・短縮
徒手整復
末梢片→牽引・背屈・外転
中枢片→対抗牽引・内転
で、あのような整復位まで戻すことが可能です。
しかし、今回の症例に関して骨片転位の把握が雑だったなと反省しており、
末梢骨片転位=短縮転位・外旋転位
が正解だったのでは、と現在は考えています。
そして、それに対しての整復方法は
- 末梢片→やや橈側に牽引しつつ回旋転位を取り除く。骨折面の圧着。
- 中枢片→対抗牽引。骨折面の圧着。
これがベストな整復ではないでしょうか。短縮を念頭に少し多めに牽引しておくのも良さそう。
固定→持続的に牽引がかかるように工夫が必要
再転位は短縮転位がほとんどなので、骨折部に持続的な牽引力がかかるようにしておけばOKだと思います。
回旋転位は絶対残してはダメ、、、
今回の固定肢位ですが、
- IP関節→伸展
- MP関節→20°屈曲
- 手関節→軽度背屈
掌側を指尖から手関節を超えてあるフェンスにて固定し、それを包み込むようにプライトンにて補強といった固定をしました。
IP関節・MP関節を曲げすぎると骨折部に軸圧がかかるのでなるべく伸展位で固定しましたが、それでも結局再転移してきてしました。
今後は、違う固定を検討してみようと思います。
固定方法に正解はないため患者さんの年齢や生活スタイルなどを考慮し、固定を選択していく必要がある。
まとめ:難しい骨折だが諦めない
ということで、第5中手骨骨幹部斜骨折はなかなか難易度の高い骨折だということです。
さまざまな理由から保存療法が難しい部位だとは思いますが、上記のヒントを参考に良い治療結果が出せるよう考察してみていただけると幸いです。
今後もこういった記事を上げていくので、ぜひ気になる記事をチェックしてみてください。